「買いたい!」って、本当に「買いたい」の?隠された顧客心理に迫る新指標
「この商品、すごく買いたい!」——そう答えるお客様の言葉、そのまま信じていいのでしょうか?実は、その「買いたい」の裏には、ブランドへの熱烈な愛から、ただ「なんとなく」といった消極的な気持ちまで、いろんなホンネが隠れているかもしれません。
マーケティングリサーチの設計・分析を手がけるラフ・コモンズ株式会社(https://roug.jp)が、そんな購入意向の質を深掘りする新しい指標「Emotional Anchor」を開発し、その検証結果を発表しました。この指標は、回答の根拠となる感情から顧客の購入意向を診断・比較するという、ユニークなアプローチを取っています。今回は、調味料ブランドを題材にしたPOC(概念実証)の結果を見ていきましょう。
購入意向の「天井効果」を突破!「Emotional Anchor」のすごいところ
みなさんは、アンケートで「このブランドをとても買いたいと思いますか?」という質問に、ほとんどの人が「とても買いたい」と答えてしまい、ブランドごとの差が見えにくくなる、なんて経験はありませんか?これが「天井効果」と呼ばれる現象です。
「Emotional Anchor」は、まさにこの天井効果を補い、購入意向の「質」の違いを浮き彫りにします。検証の結果、いくつかの興味深い事実が明らかになりました。
1. 「買いたい!」だけじゃわからない、PI(購入意向)TopBoxの落とし穴
購入意向の「TopBox」(最も高い評価)を選んだからといって、そのブランドが最高の評価を得ているとは限らない、ということが判明しました。中には、実は消極的な評価レベルにすぎない人も含まれているというから驚きです。
たとえば、「どのブランドも大した違いはないけど、まあ買ってもいいかな」という気持ちで「とても買いたい」を選ぶ人もいるかもしれません。これでは、本当にブランドに魅力を感じている熱心なファンと、そうでない人を見分けることができませんよね。

この円グラフは、購入意向の回答者がどんな気持ちで「買いたい」と答えたかを示しています。合計10.3%が「消極的評価レベル」で、その内訳は「どのブランドも、大した違いはない」(3.1%)や「特に問題ない」(7.3%)といった気持ちです。一方で、「アベイラビリティレベル」(合計45.0%)は「値段が手頃」(11.8%)や「店頭でよく見かける」(33.2%)が中心。そして「差別化レベル」(合計44.5%)は「特別な価値がある」(28.8%)や「他と比べて違いを感じる」(15.7%)といった、よりポジティブな感情が根拠となっています。このデータを見ると、「買いたい」という一言の裏に、こんなにも多様な感情が隠れていることがよくわかりますね。
2. ブランドによってこんなに違う!購入意向の根拠感情
注目すべきは、ブランドごとの違いです。普及品的なブランド、たとえばスーパーでよく見かけるような調味料ブランドでは、「店頭でよく見かける」「値段が手頃」といった「アベイラビリティレベル」の根拠感情が中心になる傾向が見られました。
一方で、特定の価値を訴求するブランドや、こだわりが強いブランドでは、「特別な価値がある」「他と比べて違いを感じる」といった「差別化レベル」の感情がより多く見られるでしょう。この違いを把握することで、ブランドの現状をより正確に理解し、今後の戦略を立てる上で非常に役立つはずです。
この棒グラフは、主要な調味料ブランド(味の素、キッコーマン、キユーピー、ハウス食品、茅乃舎、中川政七商店)について、購入意向の根拠となる感情レベルを比較したものです。「店頭で見かける」や「値段が手頃」といったアベイラビリティレベルの項目が多くのブランドで高い割合を占める一方で、茅乃舎や中川政七商店といったブランドでは「特別な価値がある」や「他と比べて違いを感じる」といった差別化レベルの項目がより顕著に表れています。このように、ブランドの特性によって顧客が抱く感情が大きく異なることが一目でわかりますね。
3. 購入意向の質は3つのレベルで診断!
「Emotional Anchor」は、購入意向の質を以下の3つのレベルで診断できるといいます。
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差別化レベル: 「特別な価値がある」「他と比べて違いを感じる」など、ブランド独自の魅力に惹かれている状態。
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アベイラビリティレベル: 「値段が手頃」「店頭でよく見かける」など、手に入りやすさや価格が購入の決め手になっている状態。
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消極的評価レベル: 「特に問題ない」「どのブランドも大した違いはない」など、積極的に選ぶ理由はないものの、特に不満もない状態。
これらのレベルを可視化することで、自社ブランドがどのレベルで支持されているのか、競合ブランドと比べてどうなのか、といった詳細な分析が可能になります。単に「買われている」だけでなく、「どんな理由で買われているのか」を知ることは、ブランドを成長させる上で欠かせない視点です。
4. 回答品質まで見抜く!Satisficing回答の影響を可視化
アンケート調査では、回答者が質問を深く考えずに適当に回答してしまう「Satisficing(サティスファイシング)回答」という問題があります。特に、回答時間が極端に短かったり、同じ選択肢ばかりを選んだりする「ストレートライナー」と呼ばれる回答者は、その傾向が強いとされています。
「Emotional Anchor」は、この回答品質の影響も反映するとのこと。つまり、Satisficing回答によって水増しされた購入意向について、再評価や新たな解釈の余地が得られるというわけです。これにより、より信頼性の高いデータに基づいてマーケティング戦略を立てることができるでしょう。

このグラフは、回答の根拠感情と回答品質(ストレートライナー率、平均回答時間)の関係を示しています。「どのブランドも大した違いはない」と答えた人の中には、ストレートライナー率が40.9%と高く、平均回答時間も短い傾向が見られます。これは、深く考えずに回答している可能性を示唆しています。一方で、「特別な価値がある」と答えた人はストレートライナー率が低く、回答時間も長めです。つまり、差別化レベルの根拠感情を持つ回答者は、より真剣に考えている傾向があるということがわかります。このデータは、単なる回答結果だけでなく、その背後にある回答者の態度まで読み解くヒントを与えてくれますね。
AIとの共創が生んだ新指標
今回の調査は、実は調査設問のAIとの共創プロジェクトの一環として行われたもので、企画設計やレポーティングの大部分を「Claude cowork」というAIが担当したといいます。
AIと共同で企画設計・分析を進める中で気づいた点も、プレスリリース添付資料の巻末に付記されているとのこと。これからのマーケティングリサーチは、AIの力を借りて、より深く、より多角的に顧客心理を読み解く時代へと進化していくのかもしれませんね。
まとめ:顧客の「ホンネ」を捉え、ブランドを強くする
「Emotional Anchor」は、単なる購入意向の数字だけでは見えなかった顧客の「ホンネ」を明らかにし、ブランドの真の強みや改善点を浮き彫りにする画期的な指標です。
あなたのブランドは、本当に顧客に「選ばれている」のでしょうか?それとも、「なんとなく選ばれている」だけなのでしょうか?この新指標を活用することで、きっと、より効果的なブランド戦略を構築し、顧客との強い絆を築くことができるでしょう。今後のマーケティングリサーチの進化に、ますます期待が高まりますね!