データ不足はもう怖くない!ヴェルトの「xCausal® データ拡張機能」がAI開発を変える

AI開発や統計解析の現場で、常に悩みの種となってきたのが「データ不足」の問題です。特に、希少な事象や重要なケースほどデータが少なく、分析や予測の精度に大きな影響を与えてきました。そんな長年の課題に対し、株式会社ヴェルトが革新的なソリューションを投入します。

2026年7月13日より提供が開始される「xCausal® データ拡張機能」は、少量のシードデータからAI開発・統計解析に必要な大規模データを生成できる画期的な機能です。この機能は、ヴェルトが提供するコーザルAI(因果AI)プラットフォーム「xCausal®」の新機能として登場します。これにより、ヘルスケア領域の希少疾患研究から、製造、金融、インフラ、モビリティといったデータ不足が深刻なあらゆる産業において、AI活用の可能性が大きく広がることが期待されます。

xCausal® データ拡張機能のデモ画面

なぜ「データ不足」が構造的な課題だったのか?

AIや統計解析において、データはまさに燃料のようなものです。しかし、現実世界では、特定のデータセットが量的に不足するという問題が至るところに存在します。例えば、不良品の発生、不正取引、設備の故障、災害、希少疾患など、意思決定上最も重要な事象ほど発生頻度が低く、データが極端に偏っていたり、不均衡であったりするケースが少なくありません。このような状況では、予測モデルが肝心なケースを見逃してしまうという課題が、さまざまな領域で起こっています。

近年、話題の生成AI系の合成データ手法も、この問題の解決策の一つとして注目されています。しかし、これらの手法は高精度なモデルほど大量の学習データを必要とするため、もともとデータが少ない現場では使いにくいという制約を抱えていました。少量のデータから生成すると、結局は元データの「焼き直し」に留まってしまいがちです。さらに、生成プロセスがブラックボックス化するため、医療や金融のように説明責任が強く求められる領域では、導入のハードルが高いのが実情でした。

因果モデル(GCM)が「データの生成メカニズム」を変える

従来のデータを増やす一般的な手法、例えばGAN(敵対的生成ネットワーク)やVAE(変分オートエンコーダ)などは、多くのデータを参照し、その「見た目(分布)」を模倣するアプローチを取ります。これらの手法は、「なぜその値になるのか」という理由までは捉えないため、参照データが少ないと精度が落ちやすく、生成過程も外部からは説明しにくいという特徴がありました。

一方で、「xCausal® データ拡張機能」が採用するグラフィカル因果モデル(GCM: Graphical Causal Model)は、アプローチが根本的に異なります。GCMは、データがどのような原因と結果の連鎖で生まれるのかという「設計図」を、データの生成メカニズムとして事前に準備します。例えば、「ある条件が変わると次の状態が変わり、その結果として品質が変わる」といった因果の関係をモデルに組み込むことで、たとえ少ないシードデータからでも、筋の通ったデータを大量に作り出すことが可能になります。さらに、生成されたデータの一つひとつの値について「なぜそうなるのか」という理由を説明できる点が大きな強みです。これは、模倣的なアプローチとは異なり、実際には観測されていない条件についても、設計図に沿って妥当なデータを生み出せることを意味します。

グラフィカル因果モデルを用いたデータ拡張機能のイメージ

「xCausal® データ拡張機能」のすごい特長

この機能には、データ不足の課題を解決し、AI活用を加速させるためのいくつかの重要な特長があります。

1. 相関の模倣ではなく、因果構造に基づく拡張

「xCausal® データ拡張機能」は、データの生成メカニズムを起点にデータを拡張します。一般的な手法が観測された相関を模倣する(内挿する)のに対し、本機能は因果構造に基づいてデータを生成するため、少量のシードデータでも効果的に機能します。そして、「なぜそのデータが生成されたのか」を因果構造によって説明できるのです。これにより、実際にはまだ起きていないけれど、起こりうる介入や反実仮想(もし〜だったら)のシナリオまで生成できるため、稀有なイベントへの対策やストレステストにも活用できます。

データ生成の具体的な流れは以下の通りです。

  • 親を持たない変数(根ノード):その変数の分布から値をサンプリングします。

  • 親を持つ変数(子ノード):親の値を入力として関数や機械学習モデルで計算し、ノイズを加えて値を決めます。これは「子 = f(親) + ノイズ」という関数型のメカニズムとして表現されます。

  • この処理を、データの流れの上流(親)から下流(子)へと順番に繰り返すことで、1件分のデータ(1行)が完成します。

必要な件数だけこのプロセスを繰り返すことで、シードデータと同じ因果関係を保ったまま、大規模なデータセットへと拡張できるわけです。

2. 忠実(Fidelity)検証機能でデータの品質を保証

拡張された「合成的拡張データ」が、元のシードデータをどれだけ忠実に再現しているかを確認できる「忠実(Fidelity)検証機能」が標準で搭載されています。これにより、生成データの品質を定量的に確認できるため、安心して利用できます。

検証は主に以下の2つの観点から行われます。

  • 各変数の分布の類似度:生成されたデータの各変数の単変量分布が、シードデータとどれくらい似ているかを比較します。

  • 変数間の相関関係の比較:変数同士の相関や依存関係が、シードデータで保持されていた通りに拡張データでも保たれているかを比較します。

さらに高い精度が求められる場合には、プロフェッショナルサービスとして予測モデルによる実用性検証も提供されます。これは、シードデータと拡張データそれぞれで同じ予測モデルを構築して比較することで、「実データの代わりに使えるか」という実用性の観点から拡張データの品質を検証するものです。

この機能における「合成的拡張データ」や忠実性の評価の考え方は、英国国家統計局(ONS)が示す合成データの定義・評価手法を参照しているとのことです。

3. コーザルAI(因果AI)プラットフォーム「xCausal®」の信頼性と使いやすさ

「xCausal® データ拡張機能」の価値は、その基盤となるコーザルAIプラットフォーム「xCausal®」があってこそ最大限に発揮されます。xCausal®は、コーディングなしで直感的に使えるSaaS型(Software as a Service)の因果AIプラットフォームです。構造的因果モデル(SCM)に基づく理論的に立証された因果推論や、頑健性評価などの機能が充実しており、信頼性の高いモデルを素早く作成できる、使いやすさと信頼性のバランスが取れたツールです。

4. プロフェッショナルサービスで手厚いサポート

ヴェルトは、この機能の前提となる因果モデル(GCM)の構築支援から、生成された拡張データの実用性検証までを、プロフェッショナルサービスとして一貫して提供しています。因果モデルの作成では、共変量など必要な変数の洗い出しやデータ準備、モデル構築支援などが行われます。実用性(Utility)検証では、シードデータと拡張データそれぞれで同一の予測モデルを構築・比較し、実際のデータとして使えるかという観点から拡張データの品質を検証することで、導入企業が安心して利用できる体制を整えています。

利用上の前提と対象について

「xCausal® データ拡張機能」が有効に機能するためには、ベースとなる因果モデル(GCM)やメカニズムが、専門的な見地から妥当であることが前提となります。

  • ご利用上の前提:もし前提となる因果モデルが実際の状況と異なる場合、誤ったデータが生成される可能性があります。本機能から出力されるデータの品質は、入力するGCMの妥当性に大きく依存するため、利用する際にはドメイン専門家による因果構造の検証と確認が不可欠です。

  • 対象データ:現在のところ、表形式の数値データを対象としています。

  • データ間のバランス:拡張の品質は、シードデータにおける変数間のバランスにも左右されます。もし元のデータに大きな偏りがある場合、生成される拡張データもその偏りを反映したものとなる点に注意が必要です。

「AI-Readyなデータ」への貢献

近年、「AI-Readyなデータ」の重要性が、国内外の政策で急速に高まっています。AI-Readyなデータとは、単に量が多いだけでなく、正確性、一貫性、完全性が担保され、機械が意味まで解釈できるような高品質なデータを指します。AIがハルシネーション(誤った情報を生成すること)やバイアスを抑え、精度を高めるためには、こうした質の高いデータが大量に必要とされています。

日本政府が2025年12月23日に閣議決定した初の「人工知能基本計画」では、「信頼できるAIによる日本再起」を副題に掲げ、日本の強みである質の高いデータの整備・拡充と、AIの説明可能性・透明性の確保を重点としています。また、2025年6月13日にデジタル行財政改革会議が決定した「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」では、データとAIの好循環を形成し、「AIで強化される(AI-Powered)社会」を実現することを基本的な視点としています。

「xCausal® データ拡張機能」は、少量の良質なシードデータを因果構造に基づいて大規模なデータセットへと拡張することで、「質を保ったままのスケール」という難しい課題に応えます。さらに、忠実性(Fidelity)検証機能によって、拡張後も正確性・一貫性が保たれていることを定量的に確認できるため、量と質を両立したAI-Readyなデータの整備に大きく貢献します。これまでデータ不足を理由にAI活用が進まなかった領域において、政府が掲げるデータとAIの好循環を力強く後押しする取り組みと言えるでしょう。

【出典】

  • 内閣府「人工知能基本計画」

  • デジタル行財政改革会議「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」

どんな分野で活躍するの?主なユースケース

「xCausal® データ拡張機能」は、データの希少性や不均衡が課題となる幅広い領域での活躍が期待されています。具体的な展開領域としては、ヘルスケア・創薬、金融・保険、フィジカルAI・モビリティ、製造業、社会インフラ・防災、サイバーセキュリティなどが挙げられます。想定されるユースケースをいくつか見てみましょう。

  • 製薬分野:外部対照群(External Control Arm)の生成

    • 数件の患者データから反事実データを生成し、治験における疑似的な対照群を構築することができます。これにより、希少疾患の治療薬開発など、治験データの収集が困難なケースでの研究を加速させることが期待されます。
  • 金融分野:AML(アンチ・マネー・ロンダリング)の新手口耐性テスト

    • 因果グラフから、まだ観測されていない不正パターンを生成し、既存の検知モデルの死角を解消することができます。これにより、金融犯罪対策の強化に貢献します。
  • フィジカルAI分野:物理整合エッジケース生成

    • 物理法則を組み込んだ因果モデルでデータを拡張することで、わずかな計測データから物理的に正しい事故データを安全に大量生産できます。これにより、自動運転システムなどのエッジケース(稀な状況)対応能力の向上に役立ちます。

専門家も期待!岡山大学 渡辺 彰吾 教授からのコメント

岡山大学大学院保健学研究科の渡辺 彰吾 教授も、この技術に大きな期待を寄せています。循環器領域の医療意思決定において、AIによる分析が進む中で、従来の相関関係に基づく予測だけでは「どの治療介入が最適か」を判断する際の信頼性確保が大きな課題でした。ヴェルトが提供する因果推論技術は、複雑な臨床データから因果メカニズムのモデルを構築し、限られたリアルワールドデータからでも最適な治療効果をシミュレーション可能にするものです。渡辺教授は、このアプローチが医療AIの解釈性を大きく向上させ、循環器疾患における個別化医療の発展に向けた重要なモデルケースになると強く期待を表明しています。

コーザルAI(因果AI)プラットフォーム「xCausal®︎」って?

「xCausal®︎(クロス・コーザル)」は、データサイエンティストでなくてもコーディングなしで使える、ビジネスユーザーをターゲットとしたSaaS型のコーザルAI(因果AI/因果推論AI)プラットフォームです。

信頼性と使いやすさを追求したインテリジェンス技術が搭載されており、事前知識設定、因果探索、因果推論、頑健性評価、根本原因分析(RCA)、そしてコーザルAIの醍醐味であるCATE(条件付き平均処置効果)まで、フルスタックな機能を網羅しています。また、対話型UIでプロンプトを入力することで、AIエージェントを介してモデルの改善やコーザルAIのさまざまな能力を使うことができるアシスタント機能も装備されています。ヴェルトでは、カスタム対応や解析代行といった伴走型のプロフェッショナルサービスも提供しており、導入企業を手厚くサポートしています。

株式会社ヴェルトってどんな会社?

株式会社ヴェルトは、「なぜ」を知る力で社会課題解決とグッドウィル・イノベーションを加速するデータサイエンス・カンパニーです。コーザルAI(因果AI)のリーディング企業として、因果関係を解明するAIプラットフォーム「xCausal®︎(クロス・コーザル)」や、専門知識や組織の高度な意思決定プロセスをAI化するカスタムソリューション「コーザルAIアシスタント」を提供しています。

ヴェルトは、ブラックボックスになりがちなAIに解釈性と説明可能性を備えた「信頼できるAI」を提供することで、社会にポジティブなスパイラルを生み出していくことを目指しています。

  • 代表取締役 CEO:野々上 仁

  • 本社:東京都渋谷区神宮前5-18-10 2-D

  • 設立:2012年8月1日

  • URLhttps://veldt.jp

今回の「xCausal® データ拡張機能」の提供開始は、データ不足に悩む多くの企業にとって、AI活用の新たな扉を開く大きな一歩となることでしょう。信頼性の高いAI-Readyなデータが、今後のビジネスと社会の発展を加速させる鍵となることは間違いありません。