アーティストRina氏の「食」への情熱と探求

Rina氏は、10年にもわたりフードフォトグラファーとして活躍してきました。その活動の中で、「食」が本来持っているパッションや生命力が、広告表現の枠組みだけでは伝えきれないのではないか、という深い問いを抱くようになったそうです。この探求心こそが、2024年から本格的にアート制作へと踏み出すきっかけとなりました。本展は、そんなRina氏の思想が今、どのような形になっているのかを示す、大切な個展なのです。

幼い頃から「生きることとは何か」という根源的な問いを抱き続けてきたRina氏。周囲との違和感を抱えながら、自身の存在や生きる意味について深く思索する日々を送っていたといいます。そんな彼女が強い没頭を覚えたのが、製菓や製パンとの出会いでした。この経験を通じて、「食」が彼女にとってかけがえのない意味を持つものへと変化していったのです。

やがて、食の魅力を伝える手段としてカメラを手に取り、当初は「作っては撮る」というスタンスだったのが、次第に「撮るために作る」へと意識が移行し、表現としての写真にのめり込んでいきました。しかし、ブーランジェとして働く中で、食の圧倒的な美味しさや職人たちの情熱が、視覚表現として十分に伝わっていない現実に直面します。食には人の心を動かす力があるにもかかわらず、それが写真の中で失われているのではないかという葛藤が、彼女をフードフォトグラファーの道へと導きました。

以降、Rina氏は「食」に宿る本質的な価値を見つめ続けています。生産者が育む素材の力、料理人が一皿に込める思想や背景。それらに真摯に向き合う中で、彼女は「食は生きることそのものである」という確信にたどり着きました。

『食の鼓動 – The Pulse of Food -』に込められたメッセージ

「人はそれぞれの役割を持ち、学びや経験を重ねながら生き、やがて次へとつながっていく存在である」「生きることは単独の出来事ではなく、絶えず巡り続ける”循環”の中にある」。

枯れ木に止まる蝶と赤い液体が滴る異形の植物が絡み合う静物作品

これまで一貫して「生きることとは何か」という問いと向き合ってきたRina氏がたどり着いたこの思想。そして、この「循環」という概念を最も体現しているものこそが「食」であると捉えています。食は、命をいただき、また新たな命へとつながっていく行為であり、「生と死」の連続の中に存在していると彼女は語ります。Rina氏の作品は、この生命の循環のあり方を食を通して視覚的に表現し、単なる美しさだけではなく、生命そのものの本質に触れるような感覚をもたらします。

土に覆われた手からキノコや植物が芽吹いているアート作品

本展では、単なる写真鑑賞に留まらず、作品と空間、その全体を通して「食」を体感できる構成となっています。食を「観るもの」としてだけでなく、「感じるもの」として、鑑賞者一人ひとりが、「食」という日常的な行為の中にある感動や出会い、そして生きることの意味に改めて向き合う機会を創出します。

暗い背景に座る短髪の女性が赤や紫の花束を抱え込むポートレート

会場を彩るインスタレーションの数々

会場であるGallery SASAKIは、Rina氏の世界観を表現する特別な空間へと姿を変えています。薄暗いギャラリー空間に鮮やかな色彩のアート作品が展示され、幻想的で神秘的な雰囲気が漂います。天井から吊るされた布や、床に点在する青い光、透明なケースの中に収められたオブジェなど、空間全体がRina氏のメッセージを伝えるためのインスタレーションとして設計されています。

薄暗いギャラリー空間に鮮やかな色彩のアート作品が展示されたインスタレーション

暗闇の中に展示された現代アートの空間

透明なケースの中に植物や果物のようなオブジェが配置され、青く光るワイヤーが絡む展示風景

暗い展示空間に青く光る球体のオブジェが並ぶ幻想的なインスタレーション

暗い空間に展示されたインスタレーション作品。透明なケース内のオブジェが青い光で照らされ、背景には渦巻く光の映像が投影されている

豪華コラボレーションイベントで「食」を全身で体感!

会期中には、Rina氏の作品世界と共鳴するシェフや器作家との完全予約制コラボレーションイベントが開催されました。これらのイベントは、食を「観る」だけでなく、実際に「味わい、触れる」ことで、本展のテーマである食の生命力を体感できる特別な機会となりました。残念ながら、全ての回が満枠となり、現在は予約受付を終了しています。

第一回:「唯一無二」(6/20(土)開催済み)

美吉野醸造の醸造家・橋本晃明氏、陶芸家・阪本健氏、そしてMATOのオーナーシェフ・山口真人氏とのコラボレーションが実現しました。大地のエネルギーを宿すうつわ、食の根源にある生命力や風土の記憶を捉えた日本酒、そしてそれらに呼応する料理が一つに編み上げられる、まさに唯一無二の体験でした。参加者は、満腹のためではなく、うつわ・酒・料理の本質に触れるための深い体験を味わいました。

赤い法被を着た笑顔の男性が美吉野醸造の日本酒「花巴」の瓶を手に持つ

  • 美吉野醸造 橋本 晃明氏(醸造家)
    奈良吉野生まれ。東京農業大学醸造学科を卒業後、2008年に杜氏に就任。「花巴」の造り手として、吉野の木桶仕込みや酵母無添加の醸造を通し、食の根源にある生命力や風土を表現。自然の多様性を醸すことで、吉野の情景が想い浮かぶ唯一無二の味わいを追求しています。
    https://www.hanatomoe.com/

髭を生やした男性が陶器が並ぶ店内で冊子を熱心に読んでいる

  • 陶芸家 阪本 健氏
    1973年大阪生まれ。丹波焼二代 市野信水氏に師事し、1999年に「辰巳窯」として独立。堺市に工房を移し、映画『嘘八百』シリーズの陶芸監修も務めるなど、多岐にわたり活躍しています。
    https://www.instagram.com/kensakamoto142/

  • MATO 山口 真人氏(Owner Chef/バーテンダー/サービス)
    1980年大阪生まれ。幼少期から食と酒に親しみ、独学で料理を学びました。京都でのバー勤務やミシュランシェフとのコラボレーションを経て、2024年8月に靱公園沿いに「MATO」を独立開業。和洋中やスパイス料理を織り交ぜたコースと、それに合わせたドリンクペアリングを提供しています。
    https://www.instagram.com/mato.kyomachibori/

第二回:「SECRETO」(6/21(日)開催済み)

Rina氏の1st写真集『SECRETO』の構想から5年を経て、東京・神楽坂のイノベーティブレストラン「SECRETO」のオーナーシェフ・藪中章禎氏を大阪に迎え、その想いや歩み、そして写真集が生まれるまでのエピソードに触れるイベントでした。このイベントでは、ここでしか楽しめないフィンガーフードと、能登の素材から生まれたオリジナルジンが提供され、視覚と味覚が重なり合う特別な体験が提供されました。

ピンセットを使い小さな料理を慎重に盛り付ける男性シェフ

  • SECRETO 藪中 章禎氏(Owner Chef)
    1975年石川県輪島市生まれ。フランス「ル プチニース」、スペイン「エルブジ」などを経て、マンダリンオリエンタル東京「タパスモラキュラーバー」のスーシェフを務め、2017年10月に「SECRETO restaurant」をオープン。「好奇心のすべてを、超え続ける。」という思想のもと、唯一無二の食体験を提供しています。
    https://www.secreto-tokyo.com/

第三回:「共鳴」(6/27(土)開催済み)

陶芸家・阪本健氏とTREEE’S KYOTOの抹茶パティシエ/ソムリエエクセレンス・木村慎助氏とのコラボレーションイベント。上質な抹茶だけが持つまろやかな旨みと上品な甘みを最大限に引き出した抹茶スイーツと、阪本氏のうつわが共鳴し合うセッションが体感できました。参加者には、阪本氏による抹茶椀がお土産として贈られ、観る、感じる、そして味わうという、すべてが重なる究極の体験が提供されました。

緑色の液体が入ったグラスの香りを嗅ぐ男性

  • TREEE’S KYOTO 木村慎助氏(抹茶パティシエ/ソムリエエクセレンス)
    ワインの上位資格「ソムリエエクセレンス」の味覚と嗅覚の分析能力を活かし、抹茶の魅力やポテンシャルを最大限に表現。茶葉の産地や品種ごとの特性を捉え、抹茶に副素材をペアリングする独自製法で斬新な抹茶スイーツを展開しています。
    https://treees.jp/

第四回:「変生」(6/28(日)開催済み)

熟成研究家ぱぱちぇる氏とBirichinataのオーナーシェフ・齊城庸平氏による、食の奥深さに迫るイベント。カビ熟成された魚を口にした経験は、きっとほとんどないでしょう。ミクロの生命が醸し出す異端の饗宴は、食の奥底にある「生」の働きそのものです。繊細な素材を探求し続ける異端と、素材の温度や余韻までを緻密に設計する異才が重なり合った時、生と死のはざまにある味わいがゆっくりと体感できる、ディープな世界へと誘われました。

青い手術着と帽子を着用した男性が、動物の蹄のような解剖学的検体を持つ

  • 熟成研究家 ぱぱちぇる氏
    1978年大阪生まれ。歯科医師として働きながら、カビを使った魚の熟成や循環器系を利用した魚の味付けなどをSNSで発信。現在、地元寝屋川市にカビ熟成の加工場を建設し、世界で唯一無二の発酵食品としてカビ熟成魚の製造販売を準備しています。
    https://www.instagram.com/papachelfishcooking/

金髪の男性が白いシャツと蝶ネクタイを着用し、優雅な盆栽の隣に立つ

  • Birichinata 齊城 庸平氏(Owner Chef/料理表現者)
    京都出身。1981年生まれ。枠にとらわれず、感覚と経験を武器に独自の料理を追求する料理表現者。原宿でのアパレル経験を経て料理の道へ進み、京都・紫竹にて『Birichinata』を開店。イタリアンを軸にジャンルを横断し、香り・温度・余韻まで設計された「体験としての料理」を表現しています。
    https://www.instagram.com/birichinata2016/

※イベントは現在、全ての回が満枠につき予約受付を終了しています。予めご了承ください。
※第1回・第4回のイベントはアルコール(日本酒・ワイン等)とのペアリングを前提とした内容でした。ノンアルコールの飲料、ノンアルコールペアリングの用意はありませんでした。第2回「SECRETO」はアルコール&ノンアルコールの提供、第3回「共鳴」はノンアルコールのみの提供でした。

様々な果物や野菜がカビに覆われ腐敗が進んだ静物画

割れたザクロから白い独特な花が伸び、煙のような背景に浮かび上がる幻想的なアート作品

暗い背景に横たわる一匹の魚が中央に配置された料理写真

開催概要

項目 詳細
展覧会名 食の鼓動 – The Pulse of Food –
会期 2026年6月18日(木) ~ 6月29日(月)
会場 Gallery SASAKI (Google MAP)
住所 〒542-0085 大阪府大阪市中央区心斎橋筋1丁目6-4 佐々木ビル3F
開館時間 11:00–19:00(最終入場18:30)
入場料 無料
主催 株式会社EART
特設サイト 「食の鼓動 – The Pulse of Food -」https://www.rina-foodphoto.com/thepulseoffood
お問い合わせ先 株式会社EART / info@eart.co.jp

アーティストRina氏 プロフィール

ブーランジェを経て写真の世界へ転身。フードフォトグラファーとして広告・ブランドビジュアルを中心に活動し、10年にわたり食専門の商業写真で実績を重ねています。2024年よりアート制作を本格始動。「食」を生命の根源的エネルギーとして再解釈する作品を制作中です。

「食」という日常的な行為の中に隠された、生命の鼓動と生きることの意味。Rina氏の作品を通して、その神秘的で力強いメッセージを感じてみてはいかがでしょうか。会期は6月29日(月)までと残りわずかですが、この特別なアート体験をぜひお見逃しなく!