オーディションから始まった、個性豊かなキャラクターとの出会い
まずはお二人のオーディション時のエピソードから。演じるキャラクターに最初にどんな印象を抱いたのでしょうか?
田村さんはプリスティモンについて「見た目がすごくかわいいじゃないですか。だから、もう少しマスコットっぽい喋り方なのかなと思っていたんです。でも実際は全然そうではなくて、結構お姉さんっぽいというか、女性らしさがあるキャラクターでした」と語っています。ウルヴァモンに進化した後も、そのお姉さんらしさは健在で、見た目の獣感とはギャップがあったそうです。レーナの心を映すような存在として、女性らしい演技を求められたと言います。

オーディションでは、もう少し声を潰した感じでアプローチしていたという田村さん。「あまりかわいい役をやることが多くないので、プリスティモンは自分の中でも結構珍しい役です」と話し、毎週「今日プリスティモンの声、出るかな」とドキドキしながら現場に向かっていることを明かしました。ゲームでは高めの声で喋ることもあるそうですが、アニメーションでは尺やかけ合いが決まっているため、その調整に苦労している様子が伺えます。
一方、黒沢さんはデジモンのオーディション自体が初めてだったそう。「デジモンという作品と自分が接点を持つ未来をあまり想像していなかったので、『すごい、どんな感じなんだろう!』と楽しみにオーディションに行きました」と当時の心境を振り返ります。しかし、オーディション会場では、プロデューサーの櫻田博之さんの“ワールド”が炸裂していたとか!
アフレコブースで先輩方が愛を込めて“サクラダモン”と呼ぶ櫻田プロデューサーに、黒沢さんは「“サクラダモン”(櫻田博之)のミラーワールドに迷い込んだ」と感じたそうです。知り合いがいなかった黒沢さんが台本を眺めるふりをしていると、櫻田さんがふらっと現れて「食べた?」と話しかけてきたという、なんともユニークなエピソードが飛び出しました。ブースの奥にお菓子が置いてあったそうで、“サクラダモン”の技のひとつには「おいしいものを繰り出す」がある、と黒沢さんは表現。初対面で戸惑う黒沢さんの代わりに、別の役者さんが「いやいや、オーディションで食べられないですよ~」と答えたことで、温かい会話が始まったそうです。この時点で、ものすごいファミリー感だったと黒沢さんは驚きを隠せません。
オーディションで監督からは「レーナは怒りに支配されているキャラクターなので、怒りを強く出してほしい」と言われた黒沢さん。しかし、当時は“サクラダモン”のことで頭がいっぱいで、とにかく自分の中で一番大きい声を出したと言います。もしかしたら、「みんな仲いいじゃん」という僻みのようなものが、e-パルスとして出ていたのかも、と笑いながら話しました。スタジオを出た時はマネージャーさんに「たぶん難しいと思います」と伝えたほどだったそうですが、後日「候補に残っているらしい」と聞いて気合が入ったそうです。レーナのように怒りがこれほどクイックに出てくる役はあまり演じたことがなく、自分にとって挑戦になると感じたと言います。
レーナとプリスティモン、二人の知られざる魅力
演じていく中で見えてきた、レーナとプリスティモンの魅力についても語ってくれました。
黒沢さんが「じんわり出てきたレーナの一面で言うと、お金が大好きなところですね」と話すと、田村さんも「初期からお金は好きだったよね。金の亡者みたいな瞬間は結構あった(笑)」と同意。最初の頃は困窮しているから頑張ろうとしている子だと思っていたそうですが、だんだん瞳にドルマークが輝くようなコミカルな描写が増えてきたと言います。そこでのプリスティモンのお姉さんらしい振る舞いや、レーナとのやり取りが新しい魅力だと感じたそうです。

プリスティモンもお金に関しては「よっしゃ、やるわよ」と乗っかるコンビ感が面白いと田村さん。しかし、レーナが行き過ぎた時にはたしなめる瞬間もあり、そういったところがお姉さんっぽいと語ります。プリスティモンは、お姉さんらしさがありながらも、そのかわいらしい外見を存分に生かしているそうです。アフレコ現場では絵が未完成なことも多いため気づきにくいものの、放送を見ると頭にぺたっと乗っていたり、細かい動きが本当にかわいいと絶賛。かと思えば、ウルヴァモンになった時にはレーナをすかさず守ったりと、かわいさとカッコよさが共存しているところがすごい、と魅力を語りました。
黒沢さんは「紅茶の湯気を愛でているところが好きです」と、プリスティモンの意外な一面を挙げます。

田村さんも「いい香りを浴びているんだよね」と共感し、その可愛さに二人で盛り上がりました。また、人間たちが変になってしまう第27話も印象に残っているという田村さん。この回はレーナも狂っているのですが、プリスティモンのためにいろいろ買ってあげたりと、優しさが見えたそうです。正気に戻った後も、プリスティモンが気に入っていた紅茶のセットはそのまま残しておいてくれるところに「優しいところあるじゃん」と感じたと言います。グラニットが倒れて雪山に行った時も、寒い状況にもかかわらず、倒れているグラニットに自分の赤いパーカーを着せてあげるレーナの姿に、キレていて怖いところもあるけれど、すごく優しい子なんだな、と改めて思ったそうです。
黒沢さんも「3話ぐらいまでは、『この子はずっと怒るのかな』と思っていたんですけど、最近は感情も豊かになってきました。おかげで進化もしていただき、ありがたいです」と、レーナの成長に感謝している様子でした。
第35話で描かれる完全体への進化と、“合わせ鏡”のようなパートナー関係
進化の話が出ましたが、第35話ではついに完全体が登場します。これまでもデジモンシリーズに関わってきた田村さんが、改めてデジモンを演じて感じたことはあるのでしょうか。
田村さんは「寄り添う感じがすごくあります」と語ります。人間の役でも誰かに寄り添うことはあるものの、人間は心が揺れたり迷ったりするのに対し、デジモンはワンちゃんに近い感覚で、一心にパートナーを思っていてブレない、と第35話でより強く感じたそうです。人間に対する思いが純粋だからこそ強いのだと分析しました。
黒沢さんが「出来事に向かっているというより、パートナーを見ている感じの方が強いですか?」と尋ねると、田村さんは「そうかもしれないです。何か出来事が起きたとしても、結局はパートナーとどう乗り越えていくか、という感じに近い。だからある意味、迷いがないんですよね」と答えます。プリスティモンやウルヴァモンだからこそかもしれませんが、信じる気持ちの強さがあると感じたそうです。
本作は人間の思考や感情から生まれるe-パルス、そしてサポタマからデジモンが生まれるという設定もあります。従来のパートナー関係よりも、一心同体や合わせ鏡の感覚が強いのかもしれません。田村さんも「本当にそうかもしれないです。相棒でもあり、兄弟のようでもあるんですけど、それ以上に合わせ鏡というか。『あなたは私で、私はあなた』みたいな感じがあるのかもしれません」と深く共感していました。
視聴者としてデジモンを見ていた時は、子どもたちの未知の力にデジモンたちが感化されて進化していく姿に心を動かされていたという黒沢さん。しかし、レーナを演じていると、プリスティモンがお母さんのような存在に感じられると言います。「甘えてしまっているんですよね。絶対にいなくならない存在というか。まだ、プリスティモンがいなくなることが物語のフックになったことはないじゃないですか。プリスティモンを失いそうになる瞬間に出会ったら、また変わるんだろうなと思います。でもそれは、『絶対にいてくれる』という安心感でもある。レーナは、嫌われないと思っている気がします」と、レーナとプリスティモンの独特な関係性を語りました。
田村さんも「というか、そんなことを考えたこともなさそう(笑)」とレーナのキャラクター性を補足。黒沢さんは「私はすごく新鮮でした。浅いデジモン歴ではありますけど、こういう形のパートナーもあるんだなって」と、新たな発見があったようです。
オーディションの時に監督から、プリスティモンはお姉さんポジションだと言われたという田村さん。レーナがなりたい像というか、大人になりたい気持ちの先にある存在なのかもしれない、だからお母さんっぽい感じもあるのだろう、と解釈を深めます。

レーナについては「もう少し男の子っぽくできますか」とディレクションがあったと黒沢さん。感情を大きく爆発させるというより、思春期特有の神経が敏感になっている感じ、少し尖った雰囲気を意識してほしいと言われたそうです。トモロウとの違いも難しい役だと感じていると話しました。

攻撃性の奥にあるレーナの防衛本能と、グローイングドーンという居場所への思い
レーナは昔から自分の居場所がなくて、今ようやくグローイングドーンという居場所を見つけた。だからこそ、家族のような場所を誰よりも大切にしているのかもしれません。
黒沢さんも「考えていそうですよね。『どうしたらここを続けていけるのか』を誰よりも考えているんだろうなと思います」と共感。キョウも考えているように見えるけれど、意外と際どいことをしていると指摘します。田村さんも「あの人、隠し事するからね(笑)」と同意。そういう意味では、馬鹿真面目にグループのことを考えているのはレーナなのかな、と黒沢さんは語りました。

田村さんは「トモロウへの当たりも、最初はめちゃくちゃきつかったですもんね。基本的にみんなにそれなりにきつめに行く子ですけど、最初のトモロウに対しては『そんなに言う?』ってくらい攻撃的で」と振り返ります。やはり、今あるグローイングドーンの家族の形を、わけのわからない新入りに壊されたくないという思いがあったのだろう、防衛本能なのかな、と感じたそうです。
黒沢さんも「攻撃性はやっぱり高いですよね。台本を自分のフィルターで読むと、そこまで相手に強く当てないで言ってしまいそうな言葉も、レーナの場合はあえて『そんなに?』というくらい大きい声を出したり、身体を使って喋ったりする。防衛が全部前に出ている子なのかなと感じます」と、レーナの演技のポイントを明かしました。
田村さんが「穏やかになる日は来るんですかね……」と問いかけると、黒沢さんは「私は、やっぱりプリスティモンがいなくなる可能性があるとわかったら変わると思うんですよねぇ」と予想。田村さんは思わず「ちょっと待って! 急にリストラするのやめてもらっていい?(笑)」とツッコミを入れ、場を和ませました。黒沢さんは、トモロウがゲッコーモンを失うかもしれないとなって頑張ったように、レーナも同じ目に遭わないと自分を改めないのではないかと話します。しかし田村さんは「いや、でももうだいぶ改心していると思うよ。トモロウって彼も彼で反抗期真っ盛りみたいなところがあるじゃないですか。そういう彼を受け入れられている時点で、レーナも結構大人になった気がします。グラニットに対してもそうだし、ムースモンに対しても優しい言葉をかけていたりしましたし。もともとはそういう子なんだと思います」と、レーナの成長を指摘しました。

「ハートブレイク」な物語を支える、ハートウォーミングなアフレコ現場
アフレコ現場の雰囲気はどのような感じなのでしょうか?
田村さんは「ファンの方からは“ハートブレイク”と言われる『DIGIMON BEATBREAK』ですけど、現場はすごく楽しいです!」と明かします。黒沢さんも「ハートウォーミングですよね」と笑顔で同意。
入野さんが冗談っぽいことを言ったり、キロプモンに対して色々言っている印象が強いけれど、たぶん大好きなんだろうな、と田村さん。「パラライズエコー」もすぐモノマネしていたりして、小学生男子みたいな感じがある、と和やかなエピソードを語りました。
黒沢さんは「私、最年少なので本当にこんなことを言うのは違うと思うんですけど、現場の雰囲気が若くて。『大学のサークルみたい!』と思う時があります」と語ります。すると田村さんは「ともよちゃんが一番大人な感じがしているよ(笑)」と返し、二人の仲の良さが垣間見えました。本当に学校みたいで、先輩も後輩も関係なくみんな楽しく喋っているそうです。スタッフさんたちも積極的に話してくれるそうで、スタッフとキャストの垣根があまりなく、喋りやすい現場だと口を揃えました。
第35話の見どころと、視聴者へのメッセージ
最後に、第35話の注目ポイントと、放送を楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。
黒沢さんは「進化という大きな出来事が起きるからには、そこには必ずフックがあると思って台本を読んでいたんです。でも、私が感じていたフックと、監督が捉えていたフックが少し違っていて。『なるほど、レーナはそんなに素直な子なんだ』と、そこで改めて気づかされました。これまで演じてきた中で、レーナのことをわかっていたつもりの部分もあったんです。でも第35話では、ここに来てまだ見えていなかった彼女の素直さが描かれている。どのセリフが彼女の心を動かしたのか、演出も含めて『なるほど』と思ってもらえたら嬉しいです」と、第35話の新たな発見を語りました。もともとオーディションの時にいただいた資料に「AIとの共存を目指す」という言葉があり、その結末を知りたいという気持ちで作品に入ったと言います。ここからどんな答えにたどり着くのか、残りの物語で何が描かれていくのか、自身も楽しみにしていると語り、「ぜひ今後の展開も見届けていただけたらと思います」とメッセージを送りました。
田村さんは「今までもレーナがメインの回はあったと思うんですけど、プリスティモンとレーナの心のやり取り、『私はこう思っていたんだ』『私はこうだよ』という会話は、意外とあまりなかった気がするんです。どちらかというと、同じ方向を向いて一緒に頑張ろうという場面が多かった。でも第35話では、改めてプリスティモンの気持ちをレーナに伝えますし、レーナの優しさや焦り、本心のようなものを、ともよちゃんが熱演していて、本当にめちゃくちゃよかったんです。今までのレーナは、強い部分や優しい部分は出ていましたけど、弱い部分や心の内はあまり見えていなかった気がします。そこをぜひ見ていただきたいです」と、第35話でのプリスティモンとレーナの深い心の交流に注目してほしいと語りました。

▼咲夜レーナ役・黒沢ともよ × プリスティモン役・田村睦心 対談インタビュー
https://www.toei-anim.co.jp/tv/digimon_beatbreak/special/interview/06/#interview06
TVアニメ『DIGIMON BEATBREAK(デジモンビートブレイク)』について

INTRODUCTION
人間の思考や感情から生まれる「e-パルス」は、AIサポートデバイス「サポタマ」のエネルギー源として活用されていました。目覚ましい発展を遂げるその陰で、恐るべき怪物が現れます。e-パルスを喰らい、進化する生命体「デジモン」です。
天馬トモロウは、サポタマから誕生したゲッコーモンとの出会いをきっかけに、非日常へと巻き込まれていきます。
賞金稼ぎを生業とするチーム「グローイングドーン」の沢城キョウたちとの共同生活を送るなかで、トモロウは決意を新たにします。
人間とデジモンが描く新しい未来とは──
CAST
-
天馬トモロウ/入野自由
-
ゲッコーモン/潘めぐみ
-
咲夜レーナ/黒沢ともよ
-
プリスティモン/田村睦心
-
久遠寺マコト/関根有咲
-
キロプモン/久野美咲
-
沢城キョウ/阿座上洋平
-
ムラサメモン/濱野大輝
放送情報
フジテレビ他にて10月5日より毎週日曜朝9時から放送中
公式情報
-
「DIGIMON BEATBREAK」公式サイト
https://www.toei-anim.co.jp/tv/digimon_beatbreak/ -
「DIGIMON BEATBREAK」公式X
https://x.com/digimon_tv
【著作権表記】
©本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーション