調査の背景:なぜ今、全社DXが注目されるの?

製造業の現場担当者からは、「うちの部署では何からDXを始めたらいいの?」「他の部署とどう連携すればいいの?」「参考になる事例が知りたい!」といった声がよく聞かれるそうです。確かに、DXって言葉はよく聞くけど、具体的にどう動けばいいのかって、なかなかイメージしづらいですよね。

そこで、ものづくり新聞では、製造業DX事例データベースを駆使して、各部門でどんなDXテーマが盛り上がっているのか、そしてどんな取り組みが進んでいるのかを事例とともにまとめてくれました。これを見れば、きっと皆さんの部署でも「これだ!」というヒントが見つかるはずです。

7部門に広がる製造業DXのテーマとデータ連携の重要性

分析の結果、製造業DXは生産現場だけでなく、設計・開発、品質、保全、調達・SCM、営業・顧客接点、経営・全社基盤の7つの部門で活用が拡大していることが分かりました。それぞれの部門でどんなDXが進んでいるのか、詳しく見ていきましょう!

部門 関連事例件数 主なDXテーマ ポイント
設計・開発 1,099件 PLM、CAE、生成AI、CAD/3Dデータ、BOM、デジタルスレッド 設計データや技術文書をつなぎ、設計変更・検証・エンジニアリングチェーン全体の高度化を進める部門
製造 2,807件 MES、IoT、ロボット、自動化、設備データ、現場見える化 生産現場のデータを取得し、工程、設備、人、ロボットをつないで現場改善や自動化につなげる部門
品質 630件 AI検査、品質データ、異常検知、画像認識、トレーサビリティ 検査自動化だけでなく、品質データを蓄積・分析し、不良要因の特定や工程改善につなげる部門
保全 421件 予兆保全、設備監視、保全履歴、点検支援、遠隔監視 設備状態や保全履歴をデータ化し、停止リスクの低減、点検効率化、技能継承につなげる部門。
調達・SCM 565件 需要予測、在庫、物流、調達DX、サプライチェーン可視化 需要・供給・在庫・物流を横断的に見える化し、変動に強いサプライチェーン運営につなげる部門。
営業・顧客接点 1,426件 CRM、生成AI、顧客データ、問い合わせ対応、デジタル販売 顧客データや生成AIを活用し、営業提案、問い合わせ対応、デジタル販売、顧客体験の高度化を進める部門。
経営・全社基盤 1,371件 ERP、BI、データ基盤、クラウド、経営ダッシュボード、全社標準化 部門をまたぐデータ基盤や業務基盤を整備し、経営判断、全社標準化、AI活用の土台をつくる領域。

設計・開発部門:PLMや生成AIで設計を高度化!

設計・開発部門では、PLM(製品ライフサイクル管理)やCAE(コンピュータ支援エンジニアリング)、そして最近話題の生成AIが大活躍しています。設計データや技術文書をしっかり連携させて、設計変更や検証をスムーズに進めたり、エンジニアリングチェーン全体の高度化を目指したりする動きが活発です。

代表事例

  • ヴァレオ(海外):ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームを導入し、R&D・購買・製造を統合。15,000人規模で生成AIを活用し、設計の複雑性を管理しながらイノベーションを加速させています。まさに、設計・開発のDXは、個別の業務効率化だけでなく、データを他部門と共有し、業務全体の判断や改善につなげる視点が重要であることがわかりますね。

  • RICOS(日本):物理学の知見に基づいたAIによるCAE技術で、スズキやマツダといった自動車メーカーが設計効率化の実証を進めています。AIが設計の妥協をなくしてくれるなんて、夢のようですね!

  • トヨタシステムズ(日本):30年以上のCAE技術を基盤に、AIによる性能予測、最適設計、結果判定を統合したCAE×AIシミュレーションを展開。これもまた、個別業務の効率化にとどまらず、データ共有を通じた全体最適を目指す好例です。

製造部門:スマートファクトリーで現場が激変!

製造現場では、MES(製造実行システム)やIoT、ロボット、自動化技術がどんどん導入されています。生産現場から設備データや稼働状況をリアルタイムで取得し、工程、設備、人、ロボットを連携させて、現場の改善や自動化を進めています。

代表事例

  • 株式会社ニチレイ(日本):ニチレイフーズのキューレイ新工場では、AI画像認識とロボットを導入して、これまで人が行っていたチャーハンの焦げ除去を自動化!スマートファクトリー化で生産性がグッと向上しています。

  • 現代自動車(韓国):シンガポールに開設されたHMGICS(Hyundai Motor Group Innovation Center Singapore)は、AI・ロボティクス・IoTを統合したスマート都市型工場。デジタルツイン技術で仮想空間と現実世界を連携させ、柔軟な生産システムを実現しています。

  • 美的集団(中国):荊州洗濯機工場では、AI「Factory Brain」が14のスマートエージェントを統制し、完全自律運用を実現。従来数時間かかっていた手作業が秒単位で完了し、効率80%向上、スケジューリング応答も90%高速化しました。製造現場のDXは、個別の効率化を超えて、データ連携による全体最適へと進んでいることがよくわかります。

品質部門:AI検査で不良ゼロを目指せ!

品質部門では、AI検査や品質データの活用、異常検知、画像認識、トレーサビリティといったDXテーマが広がりを見せています。検査の自動化はもちろんのこと、品質データを蓄積・分析することで、不良の原因を特定したり、工程そのものを改善したりする取り組みが進んでいます。

代表事例

  • 制御機器部品メーカー(企業名非公開、日本):AI Fine Matching技術を導入して外観検査を自動化。微細な傷の判定精度が向上し、調整工数を1/10に削減することに成功しました。品質のDXは、個別業務の効率化だけでなく、データを他部門と共有し、業務全体の判断や改善につなげる視点が重要です。

  • マルハニチロ株式会社(日本):ロビット社と共同開発したカット野菜用AI外観検査装置「TESRAY Gシリーズ」を大江工場に導入。選別作業の省人化と品質基準の統一を実現し、グループ全体への展開も検討しているそうです。

  • フレックス(メキシコ/グローバル):Guadalajara工場でAI/MLを活用した自動テスト手順最適化を実装。北米サイト展開により、テスト時間を20〜25%短縮し、日次スループットを35%向上させました。品質DXがもたらす効果は絶大ですね。

保全部門:予兆保全で設備トラブルを未然に防ぐ!

保全部門では、予兆保全や設備監視、保全履歴のデータ化、点検支援、遠隔監視といったDXが進んでいます。設備の状態や保全履歴をデータとして管理することで、突然の停止リスクを減らしたり、点検作業を効率化したり、さらには熟練者の技能継承にもつなげたりしています。

代表事例

  • 日立製作所(日本):Hitachi Digital Servicesが時系列基盤モデルを工場の予知保全に適用したところ、機械1台当たりのダウンタイム発生件数が半減!年間のダウンタイムを2000時間も削減したとのことです。保全部門のDXも、個別業務の効率化だけでなく、データを他部門と共有し、業務全体の判断や改善につなげる視点が重要です。

  • セラミックタイル製造企業(企業名非公開):マルチエージェント系による予知保全システムを導入し、94%の予測精度と43%のダウンタイム削減を実現。まさに、人間中心の予知保全エコシステムが構築されています。

  • BlueScope Steel(オーストラリア):SiemensのSenseye予知保全ソリューションを導入し、3年間で約2,000時間のダウンタイムを回避。AIベースの振動・圧力監視により、反応的な保全から予測的な保全へと転換しました。これで安心して設備を稼働させられますね。

調達・SCM部門:サプライチェーンをデータで最適化!

調達・SCM(サプライチェーンマネジメント)部門では、需要予測、在庫管理、物流最適化、調達DX、サプライチェーンの可視化といったテーマでDXが進んでいます。需要、供給、在庫、物流といった情報を横断的に「見える化」することで、変動に強いサプライチェーン運営を目指しています。

代表事例

  • Albertsons(米国):AfreshのAI駆動型フレッシュ補充・インベントリソリューションを全米2,200店以上の店舗に展開。特許取得済みのAIとデータモデリングを活用し、フレッシュ部門の需要と注文・販売データの整合性を向上させています。調達・SCMのDXも、個別業務の効率化だけでなく、データを他部門と共有し、業務全体の判断や改善につなげる視点が重要です。

  • ヴァレオ(グローバル):o9デジタルブレイン・プラットフォームとの7年契約により、170以上の拠点と29カ国にわたるSIOP(販売・在庫・操業計画)とMPS(基準生産計画)を統一化。リアルタイムでの意思決定を強化しています。

  • コカ・コーラ(北米):Coke One North America(CONA)ERPで12のボトラーを統合し、倉庫ロボットやAI需要予測を導入。納期達成率99%を実現し、処理時間を50日から7日へと大幅に短縮しました。データ活用がサプライチェーン全体を劇的に変えていますね。

営業・顧客接点部門:CRMと生成AIで顧客体験を向上!

営業・顧客接点部門では、CRM(顧客関係管理)や生成AI、顧客データの活用、問い合わせ対応の効率化、デジタル販売といったDXが進んでいます。顧客データや生成AIを駆使して、営業提案の質を高めたり、問い合わせ対応をスムーズにしたり、デジタル販売や顧客体験全体を高度化したりする動きが活発です。

代表事例

  • 株式会社トプコン(日本):SAP S/4HANA CloudとSAP Commerce Cloudを導入し、グローバルでの営業・マーケティング基盤をデジタル統合。B2B e-コマースを大幅に拡充しました。営業・顧客接点のDXも、個別業務の効率化だけでなく、データを他部門と共有し、業務全体の判断や改善につなげる視点が重要です。

  • タタ・スチール(インド):3つの異なる市場セグメント向けにデジタル・プラットフォームを展開。「AASHIYANA(B2C e-commerce)」では、初年度に100億ドル以上の追加収益と30億ドル以上のEBITDA向上を達成!DXが直接的な収益アップにつながる好例です。

  • キリンホールディングス(日本):「KIRIN BuddyAI Project」として、社内向けカスタマイズ生成AIツール「BuddyAI」を開発。マーケティング部門での先行導入で約39,000時間の削減効果を確認し、全従業員1万5000人への本格展開を進めています。生成AIが業務効率を劇的に向上させていますね。

経営・全社基盤部門:ERPとデータ基盤で全社を繋ぐ!

経営・全社基盤部門では、ERP(企業資源計画)やBI(ビジネスインテリジェンス)、データ基盤の整備、クラウド活用、経営ダッシュボードの構築、全社標準化といったDXが進んでいます。部門をまたぐデータ基盤や業務基盤を整備することで、経営判断の質を高めたり、全社的な標準化を進めたり、AI活用の土台を築いたりしています。

代表事例

  • 原田伸銅所(日本):7年使用した国産ERPから、中堅・中小企業向けSAP S/4HANA Cloudへ移行。データの一元管理とリアルタイムでの経営情報可視化を実現し、海外売上高の拡大を目指しています。経営・全社基盤のDXも、個別業務の効率化だけでなく、データを他部門と共有し、業務全体の判断や改善につなげる視点が重要です。

  • BASF(ドイツ):SAP S/4HANA Cloud Private Editionへの戦略的移行を開始。ハイブリッド戦略でAIやサステナビリティ機能を活用し、全社的なDXを推進しています。

  • 三菱電機(日本):Amazon Web Services(AWS)との戦略的協業MOUを締結。Serendieプラットフォームへの生成AI・クラウド技術統合、データ分析基盤強化、デジタル人材育成でAWSと連携しています。全社的なデータ基盤の強化が、今後の競争力に直結しますね。

分析から見えた3つの重要なポイント

今回の3,815件もの事例分析から、製造業DXを成功させるための3つの大きなヒントが見えてきました。

1. 製造業DXは「製造現場」だけじゃなく、全部門に広がっている!

IoTやロボット、自動化といった製造現場のDXはもちろんのこと、設計のPLM・CAE、品質のAI検査、保全の予兆保全、調達・SCMの需要予測、営業のCRM・生成AI、経営のERP・BI・データ基盤など、本当に製造業のあらゆる部門でDXの波が押し寄せているんです。これからは、自分の部署だけでなく、会社全体でDXをどう進めるか考える視点が重要になってきますね。

2. 部門別DXは、最終的にはデータでつながる!

設計データ、製造データ、品質データ、設備データ、調達・在庫データ、顧客データ、経営データ……。これらのデータがそれぞれの部署に閉じこもっているだけでは、その真価は発揮されません。事例を見てみると、部門を横断してデータを活用することで、製造業DXの効果が何倍にも高まることがハッキリとわかります。データ連携こそが、DX成功の鍵なんです!

3. 部門ごとの課題を理解できるDX人材が重要になる!

DXを進めるには、もちろん新しいツールや技術の知識も大切ですが、それ以上に重要なのが、各部門の業務課題をきちんと理解し、関係者を巻き込みながら、データと業務プロセスをスムーズにつなぐ力を持った人材です。設計、製造、品質、保全、調達、営業、経営といった異なる部門の間を橋渡しできる「DX人材」こそが、これからの製造業DX推進のキーパーソンとなるでしょう。

ものづくり新聞の今後の展望と支援

ものづくり新聞では、今回の分析レポートのように、製造業DXに関する様々なテーマ(AI外観検査、品質データ分析、トレーサビリティ、予兆保全、スマートファクトリー、MES、PLM、生成AI活用など)について、これからも継続的に分析・情報発信をしていくそうです。

また、製造業向けDX教育事業「Innovation Maker Academy」やコンサルティング活動においても、実際の公開事例に基づき、企業ごとの課題に合わせた情報提供や学習コンテンツの充実を進めていくとのこと。「ものをつくる人から、変革を動かす人へ」というコンセプトのもと、ツール導入ありきではない、本当に役立つ教育プログラムを提供しているそうですよ。

製造業のDX推進に悩んだら、ぜひものづくり新聞やInnovation Maker Academyの情報をチェックしてみてくださいね!

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