調査の背景と目的
近年、日本国内ではDX化が急速に進んでいます。2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を公表して以来、デジタル技術を活用した社会変革は業界を問わず加速してきました。2020年には経営者に求められる対応をまとめた「デジタルガバナンス・コード」が公表され、2022年にはこれらが統合された「デジタルガバナンス・コード2.0」も発表されています。詳細については、経済産業省のウェブサイトで確認できます。
- デジタルガバナンス・コード2.0|経済産業省: https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html
このような社会的な流れの中で、就活生の間でもDXに対する関心が高まっているのは自然なことです。しかし、企業がどのようなDXの取り組みをしているのかを知る機会は限られているのが現状でした。そこで、「みん就」は就活生がIT・デジタル活用やDXが進んでいると考える企業のイメージと志望度を調査し、DXブランドイメージランキングを算出しました。この調査を通じて、企業が就活生にどのように映っているのか、そして学生が企業に何を求めているのかが明らかになっています。
「2027年卒 みんなのDX企業就職ブランド調査」について、さらに詳しく知りたい方は特設サイトをご覧ください。
- みん就 2027年卒 みんなのDX企業就職ブランド調査 特設サイト: https://www.nikki.ne.jp/rd/179762/
就活生の間でDXが「必須条件」に
今回の調査で特に注目すべきは、過去3年間(2025年卒から2027年卒)のデータ比較から見えてくる、就活生のDXに対する意識の変化です。企業のDX推進状況が「志望度に影響する」と回答した学生の割合は年々上昇しており、特に2027年卒ではこの傾向が顕著になりました。
「企業のDX推進は志望度に影響するか」という質問に対して、「影響がある」「少し影響がある」と回答した学生の割合は以下の通り推移しています。
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2025年卒:66.2%
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2026年卒:69.7%
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2027年卒:77.1%
この3年間で約11ポイントも上昇し、ついに就活生の約8割がDXを企業選びの重要な基準と考えるようになりました。これは、DXがIT業界や特定の職種だけの関心事ではなく、あらゆる業界において企業の「基礎体力」として認識されていることを示唆しています。生成AIの社会的な普及を背景に、IT業界志望の学生だけでなく、文系職種や非IT業界を志望する学生の間でも、企業のテクノロジー活用度を重視する傾向が強まっているのです。
評価軸は「Business DX」から「Worker DX」へ
今回の調査から、就活生のDXに対する意識が「興味」から「必須条件」へと変化しているだけでなく、その評価軸が「企業の将来性(Business DX)」から「自身の働きやすさ(Worker DX)」へと移行している傾向が見受けられます。
今年度から導入された新しい設問の回答傾向を分析すると、ランキング上位企業と下位企業で最も差がついたのは、「【ビジネス】DX投資」といった企業の成長性に関する項目ではありませんでした。むしろ、「【環境】リモートワークを推進している」や「【環境】生産性を高めるためのオフィスづくりをしている」といった、個人の働き方に直結する項目で大きな差が開いたのです。
2025年卒や2026年卒の調査では「最新技術を使っているか」という企業の成長性に関する視点が主流でしたが、2027年卒の学生たちは「その技術によって、私は快適に、そして効率的に働けるのか」という、より自分ごととしての視点を強く持っていると考えられます。彼らは生成AIネイティブ世代であり、古いIT環境や非効率なアナログ業務は、自身のパフォーマンスを阻害する「リスク要因」として捉えているのかもしれません。
このことから、DXはもはや経営戦略の枠組みを超え、企業の採用競争力を左右する重要な要素となっていることがわかります。学生の期待に応える「働きやすいデジタル環境」を構築し、それを透明性高く発信していくことが、採用成功の鍵を握ると言えるでしょう。
各業界のトップ企業と注目のDX施策
今回の調査では、メーカー、金融、インフラ、メディア、不動産の主要5業界において、DXブランドイメージランキングが発表されました。多くの業界で昨年から首位を堅持する企業が見られる一方で、大きく順位を上げた企業もあり、各社独自のDX施策が学生から高く評価されていることが浮き彫りになっています。
メーカー業界
メーカー業界では、ソニーグループが圧倒的な支持を集めて首位を堅持しました。資生堂も前年から大きく順位を上げています。

1位:ソニーグループ
ソニーグループは、グループ全体でAIの活用とガバナンス強化を両立させる施策を展開しています。
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2025年7月には、社内向け生成AIチャットボット「Assist AI Chat Bot」の提供を開始し、社内業務の効率化を推進しています。
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金融領域においては、2025年10月にソニー銀行と富士通が協業し、勘定系システムの機能開発に生成AIを全面的に適用することを発表しました。これにより、開発期間の20%短縮を目指すなど、技術の横断的な活用が目立ちます。詳細はソニー銀行の発表で確認できます。 ソニー銀行と富士通の協業に関するリリース
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クリエイター向けには、2025年11月にAI映像解析サービス「A2 Production」にシーン要約機能などを追加した新バージョンを発表し、映像制作の生産性向上に貢献しています。
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Sony AIのGlobal Head of AI EthicsであるAlice Xiang氏が、2025年12月に世界的科学誌『Nature』の「Ones to Watch for 2026(2026年に注目すべき人物)」に選出されるなど、AI倫理の分野でも世界的なプレゼンスを示しています。詳細はこちらで確認できます。 Sony AIのAlice Xiang氏に関する記事
学生からは、「テレビやオーディオ機器だけでなく、スマホ等も開発しており、これらから大量のデータを取得できており、先進的なデータ活用をしていると感じた」「法人向けのAIシステムだけでなく、Creators’ Cloudのような製品もあり、社会全体のクリエイティビティの向上に貢献していると感じた」「ゲーム開発におけるAI活用が印象的だった。ゲーム内のシステムだけでなく、ゲーム開発のプロセスでもAIを活用し、効率化を図っているのが印象的だった」といった口コミが寄せられています。
製品開発から社内業務に至るまで、多角的な事業領域でAI技術を活用していることに加え、AI倫理の分野でも世界的に評価されている事実が、技術力に対する信頼感を生み、学生の志望度を高く維持する要因になっていると考えられます。
5位:資生堂
美容・化粧品メーカーの資生堂は、前年から大きく順位を上げました。
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2025年5月に、「DX注目企業 2025」に選定されました。詳細はこちらで確認できます。 資生堂のDX注目企業選定に関するニュース
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顧客体験の向上を目的として、年間56万人が利用する「エリクシール AIスキンアナライザー」にAIチャット機能を追加し、パーソナルケアを強化する施策を2025年9月に発表しました。詳細はこちらで確認できます。 エリクシール AIスキンアナライザーに関するニュース
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同時期に、資生堂ジャパンにおいて、店頭活動の効率化と顧客満足度の向上を目指し、生成AIを活用した独自のチャットボットを導入しています。詳細はこちらで確認できます。 資生堂ジャパンのチャットボット導入に関するニュース
学生からは、「DX銘柄に選ばれていることが印象的だった」「化粧品メーカーとIT化の関連があまりイメージできていなかったが、骨格チェックサービスなどを知り、先進的だと感じた。店舗業務の効率化に向け、AI導入を進めており、社員の働き方の改善に向け、積極的にデジタル活用している点に好感を感じた」「VR技術を活用した診断ツールが印象的だった」といった声が聞かれました。
デジタル活用と結びつきにくいイメージのある化粧品業界で、AIを用いた顧客体験の向上や店舗DXの具体的事例を示したことが、学生に新鮮な驚きを与え、順位上昇に大きく貢献したと考えられます。
金融業界
金融業界では、三菱UFJ銀行が2年連続で首位を獲得しました。

1位:三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行は、個人向けサービスから組織内の効率化まで、幅広いDX施策を展開しています。
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個人向け新サービスブランド「エムット」の始動とアプリの全面刷新により、顧客接点のデジタル化を推進しています。詳細はこちらで確認できます。 エムット始動に関するリリース
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新CRM「EPOC」への一本化によるデータ統合とAI活用の推進を行っています。詳細はこちらで確認できます。 新CRM「EPOC」に関する記事
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組織内の効率化として、野村総合研究所(NRI)と共同で生成AIを用いた人材・業務マッチングの最適化を実施しています。詳細はこちらで確認できます。 三菱UFJとNRIの協業に関するリリース
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2025年8月には、インサイドセールスのコール評価に生成AIを導入するPoC(概念実証)を開始しました。詳細はこちらで確認できます。 インサイドセールスPoCに関する記事
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OpenAIと戦略的なコラボレーションに関する契約を締結し、グローバル規模での最先端技術の取り込みを図っています。詳細はこちらで確認できます。 OpenAIとの提携に関するリリース
学生からは、「三菱UFJの口座を利用しているが、AIが回答するチャットボットの精度が高い印象」「説明会で社員全員がAIを使いこなせるようになることを目指すと言っており、AI活用に対し積極的な姿勢を感じた。銀行はやや古い慣習が残っているイメージがあったが、最新技術を駆使し、効率化が図られそうだとイメージが変わった」「社内のAI開発や、AIベンチャーへ積極的に投資をしている印象」といった口コミが寄せられました。
保守的な業界イメージが強い金融機関において、OpenAIとの提携や「全社員のAI活用」という明確なビジョンを打ち出したことが、学生が抱く既存の業界イメージを覆し、魅力的な就職先としての地位を確固たるものにしていると推察されます。
インフラ業界
インフラ業界では、テクノロジーカンパニーとしての側面を強く持つソフトバンクが首位を堅持しました。また、エネルギー開発を手掛けるINPEXも、前年から大きく順位を伸ばしています。

1位:ソフトバンク
ソフトバンクは、国内トップクラスのDX企業として評価されています。
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2025年4月に経済産業省等の「DXグランプリ2025」を受賞し、国内トップクラスのDX企業として評価されています。詳細はこちらで確認できます。 DXグランプリ2025受賞に関するニュース
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HR(人事)領域においても、「GenAI HR Awards 2025」の大手企業部門でグランプリを受賞しました。詳細はこちらで確認できます。 GenAI HR Awards 2025受賞に関するニュース
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2025年9月にはスタートアップ向けAI支援「AI Foundation for Startups」の提供を開始し、エコシステム全体の底上げを図っています。詳細はこちらで確認できます。 スタートアップ向けAI支援に関するニュース
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2025年11月、自社のAI計算基盤がAI性能ランキングで「国内1位」を獲得したことを発表し、強固なインフラストラクチャーを証明しました。詳細はこちらで確認できます。 AI計算基盤国内1位に関するニュース
学生からは、「ChatGPTの登場後すぐに、OpenAI社へ出資するなど、非常に積極的にAI活用を推進している印象。国内企業で最もAIを活用していると思う」「社内でAIコンテストを開催し、多額の賞金を用意するなど、会社としてAI活用に非常に積極的なイメージ」「もともとDX推進に積極的な印象だったが、昨今の生成AIの普及に伴い、更に加速した印象」といった口コミが寄せられました。
圧倒的な計算基盤の構築やスタートアップ支援など、自社にとどまらず社会全体のAI化を牽引するスケールの大きさが、社会貢献や成長を志向する学生から強い支持を集める要因となっていると考えられます。
6位:INPEX
エネルギー開発を手掛けるINPEXは、前年から大きく順位を伸ばしました。
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2025年4月、従業員約3,000名による生成AIの活用に向け、「ユーザーローカル ChatAI」を導入しました。詳細はこちらで確認できます。 ユーザーローカル ChatAI導入に関するニュース
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2025年9月には、デジタルプラットフォーム「CO2NNEX®」の実装を発表し、脱炭素社会に向けたデータ活用を推進しています。詳細はこちらで確認できます。 CO2NNEX®実装に関するニュース
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さらに同月、光ファイバセンシング(DAS)技術に関する論文が国際的な物理探査技術の専門誌「The Leading Edge(TLE)」の2024年最優秀論文賞に選出され、高度な技術力が世界的に認められました。詳細はこちらで確認できます。 光ファイバセンシング技術の国際賞受賞に関するニュース
学生からは、「社内で生成AIを導入し、書類作成やコード作成を行っており、活用が進んでいるイメージ」「AI活用推進のための部署があるという話が印象的だった」「ドローンやロボティクスを積極的に活用し、現場作業やオペレーションの効率化を図っている話を聞き、デジタル化の推進に力を入れていると感じた」といった口コミが寄せられています。
インフラの現場におけるドローンやロボティクスの活用に加え、全社規模での生成AI導入により「働き方の現代化」を推進している点が、学生に対して「働きやすい先進的な企業」というイメージを深く浸透させ、高い支持を得た要因と考えられます。
メディア業界
メディア業界では、電通がトップの座を連覇しました。

1位:電通
電通は、クリエイティブ領域へのAI実装を進めています。
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2025年7月に「dentsu Japan AIセンター」を発足させ、グループ全体のAI戦略を統合・推進する体制を構築しました。詳細はこちらで確認できます。 dentsu Japan AIセンター発足に関するニュース
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2025年9月、「日本語コピーライティング特化型生成AI」の開発に向けた共同研究を開始し、クリエイティブ領域へのAI実装を進めています。詳細はこちらで確認できます。 日本語コピーライティング特化型生成AIに関するニュース
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生活者のインサイト分析において、「ファンAIリサーチ 推し活」を開発し、本格的な運用を開始しました。詳細はこちらで確認できます。 ファンAIリサーチ 推し活に関するニュース
学生からは、「社内でAI活用を専門とした組織を組成し、会社全体として、AI推進に注力している印象」「DX専門人材を採用している等、人材面でのDX化に注力している印象」といった口コミが寄せられました。
クリエイティブという属人的になりがちな領域に対して、専門組織を立ち上げ、特化型AIの開発に取り組む論理的かつ組織的なアプローチが、学生から高く評価されていると推察されます。
不動産業界
不動産業界では、都市開発とデジタルの融合を進める森ビルが首位を堅持しました。

1位:森ビル
森ビルは、デジタル技術を活用した都市の魅力向上に取り組んでいます。
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デジタル技術を活用した都市の魅力向上が評価され、「2025年度グローバル観光イノベーションプロジェクト大賞」を受賞しました。
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次世代育成を目的とした「ヒルズ街育プロジェクト」において、生成AIを活用した新規プログラムを発表し、教育分野にもテクノロジーを展開しています。詳細はこちらで確認できます。 ヒルズ街育プロジェクトに関するニュース
学生からは、「社員のITスキルや技術力向上に向けて、教育研修制度に注力をしている印象」といった口コミが寄せられました。
ハード面(建物・街)の開発だけでなく、街を訪れる人々やそこで働く社員の体験向上(ソフト面)にデジタル技術と教育を積極的に投資している姿勢が、持続的な成長性を感じさせ、学生の志望度を高めていると考えられます。
まとめ
今回の「2027年卒 みんなのDX企業就職ブランド調査」は、就活生の企業選びにおけるDXの重要性が、もはや「興味」のレベルを超え「必須条件」となっていることを明確に示しました。特に、企業の将来性といった「Business DX」だけでなく、リモートワーク推進や生産性の高いオフィス環境など、自身の「働きやすさ(Worker DX)」に直結する要素が強く評価されるようになっている点は、企業にとって非常に重要なメッセージと言えるでしょう。
生成AIネイティブ世代である今の就活生は、効率的で先進的なデジタル環境が当たり前だと考えています。そのため、古いIT環境や非効率なアナログ業務は、彼らにとって企業の魅力度を下げるリスク要因となりかねません。企業は、学生の期待に応える「働きやすいデジタル環境」を構築し、それを積極的に、そして透明性高く発信していくことが、これからの採用競争力を決定づける鍵となるでしょう。
調査概要詳細
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調査主体:みん就
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企画協力:日経X Tech
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調査期間:2025年5月15日~2026年1月15日
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調査対象:2027年卒業予定登録学生のみん就会員
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有効回答人数:1,904人
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調査方法:「みん就」上でのWebアンケートおよび、みん就主催の就職イベントでのWebアンケート・紙アンケート
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投票方法:162社のノミネート企業の中から、投票者1名につき各業界ごとに「IT・デジタル活用・DXが進んでいると思う企業」を3社ずつ選択。選択企業に対して、あてはまる選択理由を11個の項目から選択(最大11個)。
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ランキング算出方法:投票数を合算し順位付け。