中学生の教育アプリ利用実態を徹底調査!成績上位層とアプリ活用の意外な関係
公益財団法人スプリックス教育財団は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」を実施し、世界5か国の中学2年生を対象に教育アプリの利用実態と計算力との関連性を調査しました。この調査から、アプリ学習の浸透度や利用目的、さらには成績とアプリ利用の間に見られる傾向など、興味深い結果が明らかになりました。
アプリ学習は「オンライン学習」「数学の演習」「解答チェック」が主流
世界5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)の中学2年生に、スマートフォンやタブレットのアプリをどの程度学習に利用しているか尋ねたところ、国によって浸透度に差があることが判明しました。
南アフリカと中国では、「よく使っている」「時々使っている」と回答した生徒の合計が90%を超え、アプリが学習ツールとしてかなり定着している様子がうかがえます。一方で、フランスではその合計が約70%にとどまり、「よく使っている」と答えた割合も20%と、5か国中最も低い結果でした。

教育アプリの具体的な利用目的については、フランス以外の4か国で「オンライン学習」「数学の演習」「解答チェック」の利用率が高いという共通の傾向が見られました。特にアメリカ、イギリス、中国では、アプリ利用者のほぼ過半数が「オンライン学習」を選択しており、時間や場所に縛られずに、個々のニーズに合わせて最適な学習環境で勉強する文化が根付いている可能性が示唆されています。
成績上位層は「数学の演習用アプリ」を積極的に活用
今回の調査では、基本的な計算問題32問を用いたテストを実施し、その成績とアプリ利用の関連性も分析されました。回答者を成績上位25%の「成績上位層」と下位25%の「成績下位層」に分け、アプリの利用率にどのような差があるかを確認したところ、興味深い結果が見えてきました。

「数学の演習用アプリ」に注目すると、南アフリカを除く4か国において、成績上位層は下位層に比べて、数学の演習用アプリをより積極的に活用している傾向が明らかになりました。特にフランスでは、成績下位層の数学の演習用アプリの未使用率が際立って高いことが確認されています。
また、イギリスでは、勉強記録・管理アプリやオンライン学習の利用者に成績上位者が多い傾向があり、オンラインプラットフォームの活用が学習成果に影響を与えている可能性も示唆されています。
ただし、この結果をもって「数学の演習アプリの利用が直接的に計算能力の向上をもたらした」と断定するには注意が必要です。学業成績は家庭の社会経済的背景(SES)と強い相関があることが知られており、成績上位層はデジタルデバイスや良質な学習コンテンツへのアクセスが容易であるため、アプリ利用率と成績の両方が高まっているという背景要因も考慮する必要があるでしょう。
世界で人気の教育アプリとその背景
実際に利用されているアプリ名について自由回答で尋ねたところ、国ごとに特徴的な結果が見られました。上位3位に挙がったアプリとその背景を紹介します。

Duolingo(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ)
中国以外の4か国で共通して人気が高かったのが、外国語教育アプリのDuolingoです。2025年には算数・数学コースもリリースされており、今後の数学学習における影響力が注目されます。
Khan Academy(アメリカ、イギリス、南アフリカ)
3か国で多く挙げられたKhan Academyは、講義動画と演習問題がセットになったアダプティブラーニングが特徴です。正誤に応じて問題の難易度が変化し、学習状況を5段階で可視化。一定期間を経て再出題される「マスタリーチャレンジ」で、短期記憶を長期記憶へと定着させる仕組みが構築されています。
Quizlet(アメリカ、フランス、南アフリカ)
Quizletは、自分や他人が作成した単語カードで効率的に学べる学習アプリです。多彩な学習モードや対戦型ゲーム「Quizlet Live」を授業に取り入れることで、生徒が楽しみながら学習に取り組める質の高い授業づくりに貢献しています。
BBC Bitesize(イギリス)
イギリスの公的教育に準拠した学習サイトで、高い利用率を誇ります。授業内容の復習や確認テストとしての側面が強く、学校の宿題として指定されるケースも多いため、イギリスの生徒に深く根付いています。
PRONOTE(フランス)
フランスの公立中学校・高等学校の9割が導入している学校生活管理用アプリです。リアルタイムでの時間割確認、宿題管理、成績やスキルの閲覧、欠席状況の把握およびその理由の提出など、学校生活におけるあらゆる情報へのアクセスと連絡機能が集約されています。
中国の教育アプリ:作业帮、猿輔導、学而思
中国では、2021年の学習塾規制後、塾大手各社がビジネスモデルを転換し、AIを搭載した学習用アプリや専用学習端末の販売へとシフトしました。
-
作业帮 (Zuoyebang):問題を写真で撮ると解答が表示される検索アプリとして普及しましたが、現在は学習端末の開発にも展開。わからない問題を写真で撮るだけで、AIが苦手を分析し、個別の練習問題を生成する機能が支持されています。
-
猿輔導 (Yuanfudao):AI技術を軸とした様々な教育アプリを展開。カメラの下に宿題を置くだけで手書き文字を認識し、即座に採点や解説動画を提示する機能などがあり、保護者の学習管理の負担を軽減するツールとして活用されています。
-
学而思 (Xueersi):好未来教育集団(TAL Education Group)の主要事業。専用学習端末では、単に答えを教えるだけでなく、思考プロセスをガイドする仕組みに注力。DeepSeekの高性能モデルを用いた「深思考(Deep Thinking)モード」を搭載し、解けない問題に対してAIが段階的にヒントを提示することで、自律学習を支えるツールとして都市部を中心に普及しています。
DeepSeekは、中国のスタートアップが開発した高性能かつ低コストなAIで、2025年1月にリリースされた最新モデル「DeepSeek-R1」は教育業界に大きな変革をもたらしました。上記の作业帮、猿輔導、学而思をはじめとする多くの教育機関が、自社の教育アプリや専用端末にDeepSeekを導入しています。
調査の背景と目的
世界的にEdTech(教育×テクノロジー)の導入が進む一方で、日本の教育関係者や保護者の間では「デジタルツールの活用は、本当に学力の向上に寄与しているのか」という疑問が依然として存在しています。
海外では、習熟度に応じたアダプティブ学習、数学の演習に特化したもの、AIによる苦手診断など、学習内容そのものをサポートする多様なツールが活用されています。日本国内でもDuolingoやUdemyといったグローバルなツールの認知度は高まっていますが、中高生の教科学習に特化した海外のプラットフォームについては、言語の壁もあり、国内での認知や活用は限定的です。そのため、海外においてデジタルツールがいかにして学力向上を支えているのかという具体的な実態は、十分に把握されているとは言えません。
そこで今回の調査では、世界5か国の中学生を対象に計算テストの結果とアプリ利用実態を掛け合わせ、その相関性を分析しました。単なる普及率の比較にとどまらず、成績層ごとの利用傾向や、自由回答から得られた具体的な機能を詳しく検証することで、学力を支える海外のデジタル学習の実態を明らかにすることを目的としています。
まとめ:教育アプリの未来と日本の課題
今回の調査から、教育アプリの普及状況は国ごとに大きな差があること、そして多くの国で成績上位層ほど数学の演習アプリを積極的に活用している傾向があることが分かりました。ただし、この背景には家庭の社会経済的背景(SES)が影響している可能性も指摘されており、教育格差の課題は今後も慎重に見ていく必要があるでしょう。
また、世界中で使われる共通のアプリがある一方で、中国のように高性能AIモデル「DeepSeek」をいち早く導入し、独自の進化を遂げているアプリも存在します。これらのアプリは、単に答えを出すだけでなく、思考プロセスをガイドするなど、学習者の自律性を高める機能に注力しています。
このような技術革新を踏まえると、今後も生成AIのさらなる進化に伴い、教育アプリの役割や機能は劇的に変容していくことが予想されます。日本の教育アプリも世界の技術動向を注視し、先進的な事例をベンチマークとしながら、独自の発展を続けていく必要があるでしょう。同時に、デジタルツールの活用が真に学習者の学力向上に寄与しているのか、その実効性についても、継続的な調査と精緻な検証が求められます。
本報告は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」に基づく第11回目の報告です。スプリックス教育財団では、今後も子どもの基礎学力に関して様々な分析を進めていくとのことです。